サイエンス・カフェの発祥地?ベルリン・ウラニア

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サイエンス・カフェという言葉を聞くようになったのはいつの頃からだったでしょうか。主に自然科学の知見を一般市民に情報として提供し、気軽な雰囲気の中で理解を深めてもらうための場、科学者と市民の間のコミュニケーションの場が必要だと、最近、日本でも各地でサイエンスカフェが開催されていると聞きます。残念ながら私は、日本に住んでいないので参加したことがないのですが。

ウィキペディアによると、サイエンス・カフェは1998年に英国で始まったと書いてあります。でも、ドイツにはそれよりももっと古いサイエンス・コミュニケーションの場がありのです。それは、ベルリンにあるウラニアという市民啓蒙センター。英国初のサイエンス・カフェが始まる100年以上も前の1888年に創設され、最初にそこで講義をしたのは博物学者で探検家のアレクサンダー・フォン・フンボルトでした。以来、ウラニアでは、自然科学だけでなく人文科学や社会科学の最新の知見、そして芸術について一般市民が知り、その担い手と直接意見が交換できる場として、様々なイベントが催され続けています。現在はその活動を約2000人の会員が支えています。

私はこのウラニアの科学イベントがとても好きで、よく行きます。昨日はコンスタンツ大学で教鞭を取る進化生物学研究者、Prof. Axel Mayer氏の講演を聴いてきました。

 

Urania in Berlin

Urania in Berlin

 

講演のタイトルは「Adams Apfel und Evas Erbe: Wie die Gene unser Leben bestimmen und warum Frauen anders sind als Männer(アダムの林檎とエヴァの遺産:遺伝子が私たちの人生に及ぼす影響、そして女性と男性が異なる理由)」。今年8月に出版されたMayer氏の著書タイトルと同じです。

Mayer氏は市民への啓蒙活動を積極的に行っており、2008年にライフサイエンスの分野で優れた啓蒙活動を行った研究者を表彰する、欧州EMBO賞を受賞しています。講演会の初めに、上記の本を執筆した理由として、Mayer氏はこんな話をされました。

現在、社会における様々な議論において、自然科学の知見が十分に活かされているとは言えません。たとえばジェンダーに関しても、自然科学の知見とは別のところで議論が進み、ともすればイデオロギー的になってしまっています。どんな意見を持つのもその個人の自由ではありますが、政策決定や社会の重要な課題の解決の場に科学の成果が活かされないというのは大変残念なことです。自然科学者はもっと社会に出ていかなければならなりません。(注:一語一句正確な引用ではありません。講演メモからの翻訳です)

講演の内容は、遺伝子とは何か、遺伝子で何が決まるのか、性とは何か等、わりあい一般的な内容(と私には思えた)でしたが、Mayer氏自身の遺伝子解析結果がスクリーンに映し出され、それを見ながらの説明が具体的で、とても面白かったです。

遺伝子が人生を決める、男女は遺伝子的に違うというタイトルを見て、確かに遺伝子の違いはあるだろうけれど、男性はこうで、女性はああだとステレオタイプを助長するような内容だったらどうなのかな?と思ったのですが、従来の「男性」「女性」のカテゴリーにぴったり当てはまらない人が確かに生物学的に存在すること典型的な男性(女性)というのはあくまで中央値であり、女性的な男性もいれば男性的な女性もいるという説明で、偏見を増大するという印象は受けませんでした。(オリンピック競技の選手にはXXまたはXYでなく、XXYなどの染色体を持つ人が少なからずいて、DNAでは男性とも女性ともはっきり区別できないので、最近はテストステロンの血中濃度を見る方式が採用されたのだそうですね)

Mayer氏は、ご自身、妻、母親の3人で23andMeの遺伝子検査を受けられています。この遺伝子検査は唾液サンプルを送ると祖先の情報や健康情報(特定の疾患に罹患するリスク等)、そしてその人のネアンデルタール人度(!)を分析してくれるというもの。このサービスが出たとき、私も興味があり、やってみようかなと考えたのですが、分析の精度がどのくらいなのかわからないし、アジア人のデータが少ないのでは?と思い、保留にしていました。でも、Mayer氏の遺伝子情報を見て、再び興味が湧きました。

遺伝子からはいろいろなことがわかるようになって来ていて、たとえば、出産経験のある女性のDNAを調べると、その女性が男の子を妊娠したことがあるかどうかがわかるのだそうです。男の子の遺伝子、つまりY染色体が母親の胎内に痕跡として残るそうです。(関連記事)女の子の遺伝子も残るのですが、母親と同じX染色体だけなので、男の子の場合のようにわかりやすくないですね。

また、遺伝子情報から、その人物の顔の再現画像をかなりの精度で作成することも可能になっているようで、米国ではDNA情報から作成した指名手配の犯人画像も登場したそうです。(サービスを提供するSnapShot社のHP)

興味深い内容だったので、講演後、本を買ってきました。読むのが楽しみです。

 

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