デザインシンキングで難民問題を解決 ワークショップ参加レポート

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受け入れている多くの難民を社会の中へスムーズに統合するために、ドイツでどのような取り組みが行われているかのレポートです。

 

昨日、ベルリン・クロイツベルク地区にあるコーワーキング&イベントスペース「Social Impact Lab」で開催されたワークショップ、“Hold Up Ankommer Berlin – Refugee Integration“ に参加しました。社会的起業(ソーシャル・アントレプレナーシップ)を支援するグローバル組織、Make Senseのドイツ支部が企画したイベントで、デザインシンキングの手法を使って難民問題の解決策を探ろうというのが趣旨。

 

近頃よく聞くようになったデザインシンキングというものがどのようなものなのか知りたいという気持ちもあり、これといったアイディアがあるわけではありませんでしたが、参加してみました。

 

集まったのは全部で80名ほど。比較的若い人たちが大半でした。

2時間半に渡るこのイベントでは、最初にMakeSenseのスタッフからワークショップについての簡単な説明があった後、参加者は3つのグループに分かれ、それぞれ作業に当たりました。私が参加したグループの課題は、難民就労支援NPO「Mygrade」の活動をこれまで以上に効果的にするためにはどうしたら良いか

 

Mygradeはベルリン在住の一組の夫婦が私財をつぎ込んで立ち上げたボランティア組織。

高いスキルを有する難民の就労を支援する目的で、「ラウンドテーブル」という難民と企業を結びつける場を提供しています難民施設を訪れてスキルを持つ難民を直接リクルートし、企業をランドテーブルに招待して直接交流してもらった上で、企業がオファーするフルタイム雇用や実習の場などに条件のマッチした難民を斡旋します

 

これまでに5回のラウンドテーブルを実施し、ドイツ国内の大企業CEOをテーブルに呼ぶことに成功していますが、企業側から150もの雇用オファーが得られたにも関わらず、実際に雇用に結びついたのはいまのところわずか11件。企業側はスキルのある難民の雇用に消極的なわけではないのですが、難民とのマッチングが難しく、存在するハードルを乗り越え、いかにしてサービスの効果を上げて行ったら良いか、アイディアが欲しいというのがMygrade創始者のワークショップに対する要望でした。

 

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では、ワークショップで実際にどのようなことを実践したのか、簡単にまとめます。

 

第一段階

参加者はMygradeの活動についての説明を一通り聞いた後、司会者の投げかける問いに対して、頭に浮かんだ言葉やコンセプトをメモ用紙(ポスト・イット)にどんどん書き、テーブルに貼り付けて行きました。質問の内容は、

  • ラウンドテーブルに参加したくなるような要素はなんですか?
  • ラウンドテーブルに参加したくなくなるような要素はなんですか?
  • あなたが企業の人だとしたら、なぜ難民を雇用したいと思いますか?

など。

答えは頭に浮かんだものならなんでも構いません。バカバカしいと思われるようなアイディアでもOKです。「美味しいコーヒー」「カジュアルな雰囲気」「陰気なイベント会場」「つまらないプレゼン」「 異文化理解」「会社のイメージアップ」「ダイバーシティ」、、、、。じっくり考えずに、とにかく頭に浮かんだことを次々書いて行きます。この作業をブレインストーミングと呼ぶのですね。

 

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第二段階

メモを仕分けしました。3つの大きなカテゴリーを設定し、参加者はテーブルに散乱したメモの中から、それぞれのカテゴリーに属すると思われるものを拾い、カテゴリー別に壁に貼り付けていきます。

 

第三段階

参加者はカテゴリーごとに3つのグループに分かれ、そのカテゴリーの下に集まったメモを見ながらアイディアを絞り込みました。私は企業側のインセンティブというカテゴリーのグループで、私たちは「CSR」「新しい市場の獲得」「経済的インセンティブ」「スキルのある社員の獲得」などを中心にアイディアを絞り混んで行きました。

 

第四段階

それぞれのカテゴリーのグループは、絞り込んだアイディアを元に問題の解決法を考え、それを全体の前でプレゼンテーションのかたちで提示しました。

 

最終段階

最終段階では提示されたそれぞれの解決法について検討するのですが、一般的なワークショップと違うところは、プレゼンを行ったグループに対する直接の批判はしないということです。ダメなアイディアだと批判されることを恐れていては斬新なアイディアがなかなか出てきません。ですから、アイディアを出す段階ではそれが良いかダメかを考えずに、自由な発想でどんどん出すことが大切なようです。

プレゼンを行ったグループは議論には参加せず、残りの者が「エンジェル(天使)」と「デビル(悪魔)」に分かれます。デビルらはなぜその解決法がうまく行かないかを指摘し、エンジェルらはそれをデフェンスします。こうすることで、実際に起こりうる問題点や批判点をあぶり出し、その対処法を考えて行きます。

 

エンジェルとデビルの対決は大真面目なものではなく、冗談も交えた楽しいもので、大いに盛り上がりました。熟考の末の完璧を求めるのではなく、どんどん湧き出るアイディアを受け止めることで一見バカバカしいようなアイディアの中に潜んでいるかもしれない優れた視点に気づくことができるようです。

 

この2時間のワークショップの中で、難民を雇用する企業がなんらかのメリットを享受する(たとえば補助金など)という、インセンティブをもたらす仕組み作りを政府に働きかけて行ったらどうかというアイディアや、ラウンドテーブルを難民にとっても企業にとってもより魅力的にするための数々のアイディアが出され、Mygrade創始者はそれを持ち帰りました。

 

デザインシンキングのワークショップは私にとって初体験だったため、見よう見まねの参加で、残念ながら大きく貢献したとは言えませんが、とても興味深く、良い経験になりました。手法が一通りわかったので、今後似たようなワークショップに参加する際にはもうちょっとうまくアイディアを出せそうな気がします。

 

この体験を通して感じたことは、デザインシンキングの手法においては参加者全員が主役であり、対立する利害の擦り合わせで解決法を探っていく従来の議論の仕方とはまったく違うアプローチであるということでした。

 

社会問題に関する議論はどうしても異なる立場のグループの対立になりがちで、「あなた達のやり方のここが悪い!」「もっとこうしてくれ!」という非難合戦や要求のぶつかり合いに陥るという図式をこれまで嫌になるほど見て来ましたが、デザインシンキングでは立場や経験により固まった意見を提示し合うよりも、潜在的なアイディアを引き出すことに主眼が置かれているようで、このようなアプローチもあるのだなあと感心しました。

 

まだよく理解していない面もあるかと思いますが、難民を大人数受け入れているドイツの取り組みにはこんなものもあるということをひとまずお伝えします。お気づきの点がありましたら、ご指摘いただけますと幸いです。

 

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