ドイツにおけるシチズンサイエンスの成功例 〜 みんなで作る全国蚊マップ

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(Image: Department of Foreign Affairs & Trade)

(Image: Department of Foreign Affairs)

 

科学研究にはデータが不可欠です。分析の質を高めるには多くのデータを収集しなければなりませんが、研究者自身が一定期間に収集できるデータの量やデータ収集範囲には限界があります。市民が協力すれば、広範囲の場所から多くのデータを短期間で集めることができます。そして、市民が研究に協力することで、社会にとって重要な科学的知見が得られ、問題の解決に役立つかもしれません。

 

これまでにこのブログに何回か、ドイツにおける市民の科学研究への参加、「シチズンサイエンス」の動きについて書いて来ました。

 

科学はみんなのもの シチズンサイエンス・イベント 「Science & People」に参加しました

 

今回ご紹介する例は、市民の協力により実現したドイツ全国の「蚊マップ(Mückenatlas)」です。

 

世界には約3500種の蚊が存在するとされていますが、そのうちドイツでこれまでに確認されているのは51種。ドイツでは蚊の研究はあまり進んでいませんでしたが、近年、欧州でマラリア、デング熱やチクングニア熱、そして中南米でジカウィルスなど蚊が媒介する病気の発生が増加していることから、リスク評価のために国内の蚊の生息状況を把握する必要性が認識されるようになりました。

 

グローバルな人や物の移動が活発になっていることや気候変動により、蚊を含めた様々な生き物が従来の生息地から別の地域へと運ばれ、移動します。意外なことに、蚊はアジアからの古タイヤの輸入などによってもヨーロッパにもたらされているのだそうです。タイヤの窪みに溜まった水の中に蚊が卵を産みつけ、タイヤとともに「輸入」されてしまうことが珍しくないとのこと。

 

ドイツにおける蚊の生息状況を把握するため、2012年、ライプニッツ農業景観研究センター(ZALF)と フリードリッヒ・レフラー研究所 (FLI) は国内蚊マップの作成プロジェクトを開始、市民へ参加を呼びかけています。

 

この取り組みへの市民の参加意欲は強く、今年2016年にはプロジェクト開始以来最高の30000サンプルが集まりました。

(Image: Mueckenatlas.de)

(Image: Mueckenatlas.de)

 

プロジェクトへの参加はとても簡単で、HPからダウンロードしたフォームに必要事項を書き入れ、捕獲した蚊を「潰さずに」フィルムケースなどの容器に入れて郵便で送るだけ

市民の貢献のおかげで、ケルンおよびコブレンツでは脳炎の原因となる西ナイルウィルス等を媒介するヤマトヤブカ (Aedes japonicus) の個体数が増えていることが明らかになりました。中央ヨーロッパの寒冷な気候にも順応性があるこの新種は2008年にバーデン=ヴュルテンベルク州で初めて確認され、現在はすでにドイツの多くの州に拡散している模様です。

参加者はサンプルを送付するだけでなく、蚊についての生物学的な情報をプロジェクトHPから得ることができます。集まったデータはデータバンク「CULBASE」に保存されます。

 

夏の夜、網戸のないドイツの窓から侵入した蚊は本当に嫌なものですが、来年はプロジェクトに参加するために「そっと」捕獲するのが楽しくなるかも。

 

参考:

mueckenatlas.de
Deutschland: Stechmücken fangen für die Wissenschaft

 

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