寄生虫に支配される私達 ”Die Psycho-Trojaner – Wie Parasiten uns steuern”

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先日、Planet Wissenというテレビの科学番組で”Parasiten – die heimlichen Herrscher” (寄生虫 〜 密かな支配者達)という番組をやっているのを見ました。デュッセルドルフ大学寄生虫学教授Heinz Mehlhorn氏と生物学者で科学ライターでもあるMonika Niehaus氏という二人の専門家が寄生虫について語っていたのですが、とても面白い内容でした。一言で説明すると、、、。

 

寄生虫の中には動物そしてヒトの脳の中に入り込み、行動を支配するものがある。

 

 

寄生虫が魚やネズミ、猫などの生き物の脳内に侵入して棲みつくと、寄生された生き物は異常な行動を取るようになる。ドーパミンやセロトニンなどの脳内伝達物質の分泌が異常をきたすためである。通常、生き物は自分を捕らえて食べる生き物に遭遇すると隠れたり逃げたりして身を守るが、寄生虫に脳を侵されると脳内伝達物質の分泌が異常になり、激しく動き回るなどの異常行動を取る。その結果、寄生虫が感染した生き物は目立ち、捕獲されやすくなる。寄生虫はこうして戦略的に宿主を乗り換えて行くという話です。

そして、ヒトもまた同じように寄生虫によって脳を支配され、行動をコントロールされている可能性がある。鬱や統合失調症などの精神疾患の原因の一つは寄生虫による脳内伝達物質の分泌の変化かもしれない、というのです。

特にトキソプラズマ原虫の感染者は多く、ドイツではほぼ二人に一人が感染しているとのこと。猫などのペットから移ることもありますが、食べ物を通し手の感染が主で、ドイツではメットヴルストという生の豚ひき肉を食べる習慣があるため、他の国と比べて特に感染率が高いのだそうです。トキソプラズマに感染した人の集団はそうでない人の集団に比べて疑り深くなる、規範に従わない、記憶力が低いなどの研究があり、精神疾患との関連性が指摘されています。統合失調症患者の3/4はトキソプラズマに感染しているというデータもあるとのこと。

 

とても興味深かったので、番組に出演していたMonika Niehaus氏のこちらの本を買って読みました。

Die Psycho-Trojaner – Wie Parasiten uns steuern

 

この本も大変面白かったです。専門書というよりもわりあい科学読み物に近く、ユーモラスな文体で大変読みやすい。シラミやノミ、ギョウ虫などの「古典的」な寄生虫から、ボルナウィルス、ストレプトコッカスやトキソプラズマのように脳に潜んで「トロイの木馬」のように巧みにヒトの行動を操っているかもしれない寄生生物まで、様々な寄生生物と人間の関わりについて書かれています。科学的側面だけでなく、文化的側面も面白い。それにしても、昔の人の衛生観念は現代とは全く異なり、シラミなどの寄生虫に対しても今では考えられない感覚を当時の人たちは持っていたのですね。「不潔であればあるほど神聖」だからと、頭からこぼれ落ちたシラミをわざわざ拾ってまた頭に乗せたり、シラミを飼っていると精力が高まるなどと信じていたとは、、、。

読んで知ったことを全部紹介したくなるほどなのですが、あまりに長くなるので簡単な紹介にとどめておきます。

 

寄生虫と聞くと良い気持ちはしないものですが、目に見えない小さな生き物が私たちの心を操っているかもしれないというのは興味深いです。世の中にはいろいろな人がいて、中には「一体なぜ?」と他人には理解しがたい行動を取る人もいますが、本人にもどうにもできない理由があるのかもしれません。私たち人間の心はどこまでが自分のものなのだろうか、と考えさせられる本でした。

 

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