ポツダム近郊のCCS(二酸化炭素貯留)プロジェクトサイトを訪問しました

LINEで送る
Pocket

工場や発電所など、大量の二酸化炭素が排出される場所で、大気中に放出される前に集め地中に貯蔵する技術、CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)は、地球温暖化問題解決の切り札と言われています。

 

数年前、とあるサイエンスイベントでCCSに関する講演を聞いて以来、気になっていました。

 

米国や欧州を中心に世界各地でCCS技術のプロジェクトが進められており、日本でも北海道の苫小牧で実証プロジェクトが始まっています。

ドイツでも、ポツダム市近郊のKetzinという小さな町で、ポツダム地球科学研究所(GFZ)の研究チームによるパイロットプロジェクトが実施されていると知り、私の住んでいるところから車で1時間弱の場所なので、見学に行って来ました。

 

メールで個人的に申し込んで行き、GFZのDr. Ing. Fabian Möller氏にご案内頂きました。見学者は私と夫だけだったので、プレゼンテーションと施設内の見学だけでなくじっくりとお話を伺うことができ、とても有意義でした。

特に面白いと思ったポイントいくつかをシェアします。

 

CCSには大きく分けて、以下の3つのオプションがあります。

  • 塩水帯水層へ二酸化炭素を圧入し、貯蔵する
  • 枯れかかった油田やガス田に二酸化炭素を圧入して採掘量を増やすことを目的とした石油増進回収法(Enhanced Oil Recovery)またはガス増進回収法( Enhanced Gas Recovery)
  • 枯渇した油田やガス田の空洞部を二酸化炭素の貯蔵に利用

 

今回見学したKetzinのサイトでは、塩水帯水層へのCO2圧入・貯蔵実験を行っています

 

ドイツ国内の推定CCS容量は、塩水帯水層が6〜12ギガトンと枯渇した天然ガス田の2.5ギガトン。ドイツでは塩水帯水層のポテンシャルが圧倒的です。

 

CO2の貯蔵には粒の粗い砂岩などを多く含んだ地層とキャップロックと呼ばれる遮蔽層が必要です。Ketzinのプロジェクトでは砂岩の砂粒の隙間にCO2を貯蔵し、その上の泥岩層がCO2が再び地上に漏れ出て来るのを防ぎます。CO2を圧入するために地表からドリルで開ける穴は地中深ければ深いほど圧力が高くなるため、それだけ多くのCO2を貯蔵できますが、深く掘るほどコストが高くなり、現実的な深さはおよそ800〜1000メートルとされています。Ketzinでは5箇所のドリリングを行い、CO2を圧入しました。

 

 

 

(Image: GFZ)

(Image: GFZ)

TES_0656

地面に並べられたドリルパイプ

 

TES_0657

この下にドリルホールが開いています

 

2008年に開始したKetzinのプロジェクトは2013年までに圧入が無事完了、現在は、圧入したCO2の地中での移動をモニタリング中です。地表に人工的に振動を与えて地震波を測定し、その変化を観察します。地震波の伝わる速度は地層の密度により変化するので、ベースライン値からの変化を見ることで地中に圧入したCO2の挙動を監視することができるそうです。

 

IMG_1497 (1)2009年(22,000トン圧入後)と2012年(61,000トン圧入後)の比較画像

CO2の広がりがわかる (Image: GFZ)

 

このプロジェクトは2018年に終了予定。ということは、モニタリング期間はわずか数年間ということになりますね。何百年にも渡る貯蔵を目指しているのに、そんなに短かい期間ではほとんど何もわからないのでは?という私の素人質問にはMöller氏より以下のような回答が得られました。

貯蔵したCO2は長い時間をかけ少しづつ上方へ移動して行きますが、それを確認するために100年後までプロジェクトを継続することはもちろんできません。ですから、我々はCO2の圧入後、さらに塩水を注入することでCO2の移動を加速させました。つまり、約100年後の状態をシミュレーションしています。

 

これまでの観測で、貯蔵したCO2の挙動をうまく監視でき、また、万一、CO2の貯留槽からの漏洩があった場合に検知できることがわかったそうです。

 

プロジェクトを実施するにあたって、地元住民はどのような反応だったのかが気になりました。Möller氏によると、プロジェクトの開始以前、多くの地元住民が反対していました。

CCSは危険なのではないかと、最初、住民はプロジェクトに反対していました。地球温暖化問題が問題なら原発を建ててクリーンなエネルギーを作ればいいじゃないかという意見もありました。

でも、そうこうしているうちに日本でフクシマ事故が起き、空気が変わりました。CCSをやってみる価値があるのではないかと考える人が増え、プロジェクトが実現したのです。プロジェクト開始以来、私たちは住民向けのイベントなど広報活動に力を入れており、今では地元の人々の理解が得られています。

 

ドイツ国内には他にもいくつかのプロジェクト候補地がありましたが、Ketzin以外ではいずれも住民の反対が強く、実現していないとのことです。

 

しかし、このプロジェクトも来年には終了します。開けた穴は元通りに埋め、敷地は所有者に返却するとのこと。その後はCCS研究はどうなるのですかと聞いたところ、意外な返事が返って来ました。

プロジェクトの終了をもって私たちのCCS研究も終わります。そもそもこのプロジェクトは研究費を集めるのがとても大変でした。我々のメソッドを使って圧入したCO2の移動をモニターできることを確認できたという点で、このプロジェクトには大きな意義があったと思いますし、地元の理解も得られました。でも、ドイツではCCSは商業ベースに乗せられず採算の取れる見込みがないことや、環境団体の反対が強いので、このパイロットプロジェクトの規模を超えた実証プロジェクトが実施されることはないでしょう。

 

そうなんですね、、、。では、CCSは無意味なのでしょうか?「地球温暖化問題の切り札」と期待が高まっているのだと思っていたのですが。

 

CCSは地球温暖化問題の決定的な解決にはなるわけではありません。貯留層がいっぱいになればそこで終わりだからです。

 

しかし、再生可能エネルギーや電気自動車の普及だけでは地球温暖化問題を解決できないのも事実です。今後も製鉄やセメント産業からCO2は放出されます。特に新興国ではこれからも大量の放出が続くと考えられます。CO2には国境がありませんから、一つの国の問題は地球全体の問題です。ですから、やはり対策が必要なのです。CCS技術は一つの有効な方法でしょう。

 

Ketzinには多くの国から見学者が訪れているようです。日本からも訪問があったとのこと。

 

 

TES_0658

Dr. Ing. Fabian Möller氏。

 

Ketzinプロジェクト初期の動画。

 

ドイツでは実証試験は実施される見込みがありませんが、苫小牧のプロジェクトの結果がどのようなものとなるか、気になります。とても興味深いお話を聞くことができたので、見学に行ってよかったです。

 

 

sponsored link


Also published on Medium.

LINEで送る
Pocket




コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA