医療大麻には賛成?反対? ドイツでは2017年に合法化の見通し

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Image: Flickr/Dāvis Mosāns

 

大麻の使用に関して、以前からドイツを含む欧州の国々では議論が絶えません。

嗜好品としての大麻は他の多くの欧米諸国同様、ドイツでもティーンエイジャーを中心にかなり蔓延しており、取り締まることは非常に困難な状況です。大麻の流通を巡る犯罪を防止するため、大麻の使用を合法化しても良いのではという議論も長年に渡って繰り広げられています。

 

合法化賛成派からは、よくこのような主張を耳にします。

 

アルコールの方が大麻よりも有害性が高いのに、なぜアルコールは合法で大麻は違法なのか?

 

しばしば根拠として挙げられるのは、2010年に薬物に関する独立科学評議会(ISCD)が発表した薬物の有害性に関する以下のデータ。

 

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Image: Wikipedia (Alcohol abuse)

 

グラフから読み取れるように、アルコールが「使用者本人へ及ぼす害」と「他人へ及ぼす害」を合わせたスコアが70を超えるのに対し、大麻(カンナビス)は合わせて20ほど。アルコールは大麻の3.5倍も危険であるとみなされているんですね。ヒトの脳内にはアナンダミドという多様な機能を持つ神経伝達物質が放出されていますが、これは内因性カンナビノイドと呼ばれるもので、このことから同じカンナビノイドである大麻の主成分は体にとってそれほど異質なものではないと考えられるそうです。それとは対照的に、アルコールは人体にとってあくまでも異物であり、細胞や組織にダメージを与えます。アルコールの摂り過ぎで死に至ることはありますが、大麻の吸い過ぎで死亡することはないというのが現在の科学的知見です。

 

以下の動画はドイツ語ですが、科学番組で大麻とアルコールの人体への影響を比較する実験を行っています。結果はやはり、「大麻の方がアルコールよりも有害性が低い」でした。

 

 

アルコールよりも危険度が低いとはいえ、大麻はやはり薬物。使用しないに越したことはないでしょう。しかし、大麻は「いけない薬物」であるだけではありません。大麻が含有する成分であるテトラヒドロカンナビノール(THC)やカナビジオール(CBD)などのカンナビノイドには様々な薬理作用があり、これらが様々な疾患の治療において効果を発揮することがこれまでの研究で明らかになっています

 

カンナビノイドはCB1、CB2という中枢神経系のカンナビノイド受容体を介して作用しますが、CB1は主に動作や情報処理に関わる神経細胞に存在し、カンナビノイドの摂取は多幸感、集中力・記憶力の低下、受け身でリラックスした気分など様々な神経作用を引き起こします。また、食欲増進、目眩、吐き気、抑鬱などが生じることも。大麻の作用の強さは使用量や使用者のその時の精神状態によって変わりますが、一般的には、大麻を吸引するとすぐに反応が生じ、その効果は遅くとも15分以内にピークに達し、2〜3時間後に完全に消滅するとされています。クッキーやお茶などのかたちで摂取した場合には、その前に食べたものの内容や量で反応の大きさが変わります。

 

このように神経に様々な作用をもたらすカンナビノイドですが、疝痛などの病気の症状緩和への利用が検討され、25年ほど前からそのための研究が世界で進められて来ました。大麻で病気を治すことはできませんが、例えば以下のような具体的効能が認められています。

 

  • 多発性硬化症(MS)の痙縮の緩和
  • 多発性硬化症、リウマチ、癌、ニューロパチーにおける慢性の痛みの緩和
  • HIV/AIDS、癌、アルツハイマーなどによる食欲不振・体重減少の見られる患者の食欲増進
  • 化学療法の副作用の吐き気緩和
  • 緑内障患者の眼圧降下
  • てんかん発作の抑制
  • 炎症の軽減
  • 不眠の解消

 

こうした様々な治療効果を期待して、来年(2017年)、ドイツでは医療目的での大麻の使用が合法化される見通しです。

これにより、大麻による効果が見込まれる重症患者に限り、医師が医療大麻を処方できるようになります。

今までにドイツ国内では特例として77名の患者に医療大麻が処方されています。しかし、その費用は患者が自己負担しなければなりませんでした。予定通り新法が施行されれば、医療大麻の費用は健康保険でカバーされるようになります。同時に健康保険会社は大麻の治療効果の調査研究を実施するよう義務づけられ、処方を受ける患者は被験者として研究に参加しなければなりません。

 

ドイツでは医療大麻の栽培及び輸入を国家が管理することになりますが、自家栽培は、たとえそれが医療目的であっても、引き続き禁止です。これまでに例外として、多発性硬化症の患者が自分で使う目的に限り、自家栽培が認められるケースがありましたが、許可されるまでには患者の必死の訴えと長く辛いプロセスがあったようです。(上の動画に当事者のインタビューがあり、許可を受けるまでの戦いが語られています)

 

Image: Flickr/Kyle Butler

Image: Flickr/Kyle Butler

 

今回の動きはあくまでも医療目的での大麻の使用に関するもので、嗜好品としての使用を合法化するものではありません

 

しかし、ある人には「いけないもの」でしかない大麻も別の人にとって医薬品となりえる以上、漠然としたイメージで何かを絶対悪とみなすのではなく、客観的なデータをもとに社会の中で何を容認するべきかを議論することは大事なことでしょう。

 

現在の私には大麻は全く必要ありませんが、将来、重い病気になって医薬品としての大麻が必要となることもあるかもしれません。

医療大麻の合法化は私にとって引き続き注目して行きたいテーマです。

 

 

参考:

Cannabis – eine Droge als 薬物に関する独立科学評議会Medikament (Science Media Center Germany)

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